2014年2月7日金曜日

良い物を作れば売れる時代ではない、大事なのはストーリーだ、と言う話(ゴーストライター騒動からの考察)






ゴーストライターの話()がずいぶんと話題ですね。
音楽家の間だけで騒がれているのかと思えば、一夜明けた6日には
NHK・民放各社でたくさん取り上げられてました。

責任や問題の話はそんなに興味がないのでいいですけど、
この騒動への観点のひとつとして僕も注目しているのは
「結局みんなストーリーに感動したのであって、曲自体の完成度は重要でない(あるいはそこまでウエイトが置かれていない)」というやつ。

ゆえに「日本人は自分の中に判断基準がないから未熟だ」or「ストーリーをでっち上げた佐村河内氏はヒドい」
というような指摘もありますけど、そこもあんまり重要じゃない。


「求められているのはストーリーであって、作品の質は良かろうが悪かろうがあまり関係ない」
のが、日本という市場の空気感だ、という事実が改めて突きつけられたことに多大な波乱を感じます。




どうあがいたって「上手さ」は副次的要素なんですよー


“48商法”も“現代のベートーベン”も“アップル信仰”も共通して
「商品とストーリーをひとつにパッケージングして売る」というビジネスですよね。
商品のクオリティと同じかそれ以上に、ストーリーの持つ求心力が
購買意欲を高めることに影響を与えています。



「押しメンの〇〇ちゃんをセンターに立たせるために!」
「全聾の作曲家が作った交響曲!」
「Macを持つことこそクール!」



もちろんそれぞれ良い質の製品を提供しているとは思いますが、
それ以上にユーザーが購買に動く、その動機、買おうと思ったとっかかりは
製品の出来よりも、ストーリーに心が動かされるかどうかにポイントがあるのがよくわかります。

そして、そういう消費のされかたは
広く日本の隅々まで行き渡っている消費者の心理なのですね。


これを良いか悪いか考えると、ややこしいので僕はその点は置いとくことにします。
だって、現実が「ストーリー至上主義経済」なんだもの。実体が。



いいですか。
人々に選ばれるためにもっとも重要なのは、ストーリーなのですよー
上手さや品質はそれと同等かそれ以下しか重要度を持たない、副次的要素なのですよー

クリエイターがどれだけ質のいいアウトプットをしても、
それを受ける側はそれ自体が良いものか悪いものかの判断ができないのです。
ストーリーと言う、わかりやすい「価値判断のカタログ」を付け加えてあげないと
手にも取ってもらえないのですよー

良い物を提供すれば勝手に売れる、なんて幻想なんですよー




ストーリーを作り上げる能力が必要な時代になってきた


結論を言えば

ストーリーを作る能力のあるクリエイターでないと表に出られない社会になった

のです。
かなしいかな、これが現実です。

あるいは、

周りが勝手にストーリーを作り上げてくれるぐらい素材として面白い人物or作品じゃないと取り上げてもらえなくなった

のですね。

わかりやすくていいじゃないですか。
はっきりしてて。


上手ければ出てこられる

から

上手くなくても出てこられる 
      or 
上手いだけじゃ出てこられない

へ。


ストーリーを作る、というのは、ウソをつくのと違います。
本来社会とは別に存在する作品や人物を、
社会と繋げるために、架け橋をデザインするという作業です。
それさえもクリエイションの、表現のひとつと捉えましょう。


どんな仕事でも、時代が変われば必要とされる能力が変化するのは当然のこと。
なのに、クラシック音楽や芸術の分野だけ昔と同じ方法だけやっていればいい
というのはオカシな話だなんて誰にも分かることですよね。

新しい能力が、必要とされる時代になったのです。




「ストーリー」が重要視される現代では、表現者の“志”のみが品質を保証する


けれど、「ストーリーが重要視される」ことの問題と、
「だから品質は低くてもいい」というのはまったく違う話ですよね。

「ストーリーもあるけど品質も抜群」というのがやっぱり一番良いわけで。


質が良くなければ取り上げてすら貰えなかった時代とは違い、
ともすればストーリーさえあれば表舞台に立てる構造となった現代では
アウトプットの質を要求するものは、表現者自身のモチベーションだけになったのです。

質はほどほどでもいいや、と思うか、高品質なものをストーリーと一緒に提供しよう、と思うかは、
僕ら表現者の“志”次第です。
もちろん、高品質なものそれだけを見て欲しいからストーリーは付与しない、と言う選択もまた正しい。
すべては、僕らの選択次第。僕らの“志”次第なのです。
シンプルで良いですね。



僕は、上手くなりたいと思います。
上手くなりたい。歌がうまくて、最高にチャーミングな歌手になりたい。
そうして、歴史あるクラシック音楽を取り巻くいろんなストーリーを
僕という人物像を通してたくさんの方に手渡したい。
同時に、たくさんの方が持つストーリーを受け取ってそれをクラシック音楽に組み込んでいきたい。
そう強く思います。


僕の周りを見渡せば、高い品質のアウトプットを目指す表現者が多くいるので、
これからの時代が本当に楽しみです。
クラシック音楽はガンガン変容する時代を迎えることでしょう。
高い品質と魅力的なストーリーを伴って。








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