2014年1月21日火曜日

人生相談とはただ愛情によってのみ生の対話となりうる、という話



世の中には哲学に興味がある人と、哲学なんて何の役にもならないか害になると思っている人と
ふたつにわけられます。
僕は、哲学に興味がある人です。




哲学の先生と人生の話をしよう / 國分功一郎


評論家の宇野常寛さんが主宰する「PLANETS」のメールマガジンでの連載コーナーを
書籍化したのがこの本。

読者から寄せられる「人生について」のさまざまな質問に、
Q&A方式で、哲学者の國分功一郎さんが答えていきます。


この本の魅力はまず、寄せられる質問内容の多彩さ。
親子関係についてや仕事についてはもちろん、
「マスターベーションばかりしてしまうがどうしたらいいか」とか
「哲学を勉強したいのだがどこの大学に行けばいいか」とか
もうその質問内容の振れ幅はジェットコースター並みです。
どれも切実で、どこか自分にも身に覚えのあるような相談がたくさんあります。






この本のもうひとつの魅力は、相談に対する國分功一郎さんのアンサーです。

もし興味があってこの本を読んでみようと思った方、
あるいはすでに持っていてもう一回読み返してみようかなと思った方は、
相談に対して、まず自分でいちど回答してみるといいですね。
自分が相談を受けていると思ってまずは答えてみる。
そのあとに國分さんの返答を読んでみる。


國分功一郎さんはとても頭のいい哲学者さんですけど、
「頭の固い学者先生」あるいは「頭のおかしい浮世離れした人」という
いわゆる哲学者のステレオタイプからずいぶん遠いところにいる人です。
僕ら、フツーの若者と同じ土俵にいながらも思考の深淵も持ち合わせているという
なんとも魅力的な人物です。

そんな彼が相談者に語りかける回答は、ときに優しくときにピリッと辛口で
どれにも愛情がこもっていることがわかります。



持ちかけられた質問に対して、一般論で返答するなんてことはないし、
ヒネた哲学者にありがちな「理想論」で問題解決をしようという姿勢もありません。
相談者と國分さんとの生の対話が、そのQ&Aには感じられます。

哲学的に難しい解答をしてやれ、みたいな傲慢さもないし
哲学をわかりやすくするためにセンセーショナルな返答をしてやれ、みたいな下品さもありません。

懇々と相談内容に目を通し、そこから相談者の人となりやそれまでの人生を読み取ろうとし、
まるで目の前に相談者がいるような、体温の伝わる言葉で回答をしています。
これって、なかなかできることじゃないですよ。


ともすれば僕たちは、目の前で誰かの相談を聞いているにもかかわらず、
目の前のその相手を無視して、自分の言いたいことを「相談への返答」として
おしつけてしまうようなところがあるじゃないですか。






以前から國分功一郎さんの著書は読もう読もうと思っていたんだけど、
「なんとなく今は理論書めいたものは読む気力がないなー」と思って後回しにしていました。
そしたら、この読みやすそうな対話篇が出版されたので、こりゃいいやと手に取りました。

案の定、いい本でした。

相談への返答から、國分さんの人柄と、彼の思考の芯みたいなものが、ちゃんと届いてきます。



先日このブログで絶賛した「すべてはモテるためである」も、本書にて紹介されています。





参考までに、「哲学の先生と〜」の目次を引用してみますね。

【目次】
1.バブル世代の父親がドバイから仕送りを送ってこなくて困窮しています
2.子持ちの彼女への愛は本物でしょうか?
3.勉強より、リア充のようなコミュ力を磨いた方がいいのでしょうか?
4.女性との接し方が分からず、ホモソーシャル的な空気に逃げてしまいます
5.29歳ですが、まともに長続きをした恋愛をしたことがありません

6.婚外セックスに虚しさを感じ始めました
7.マスターベーションばかりしてしまうのですがどうすれば良いですか?
8.義両親の態度が「ゴネ得」に感じられてしまいます
9.断っても断っても誘ってくる相手に諦めてもらいたいです(手を汚さずに)
10.仲良くしようとしてくる親が気持ち悪くて耐えられません

11.どうすれば前向きに語学を学ぶことができるようになるでしょうか
12.哲学の勉強をするには、どこの大学に行くのがいいでしょうか?
13.付き合っていた頃から、何かと夫に主導権を握られています
14.彼女のために高級ソープ通いをやめるべきでしょうか?
15.「自分に嘘をつく」とは、どういうことなのでしょうか?

16.年下の人と仲良くなるにはどうすれば良いでしょうか?
17.会社の先輩から、行きたくない飲みに誘われます
18.タメ口の仕事相手がどうしても許せません
19.知人が、高校を中退して美容師になると言っているのですが…
20.交際相手が自分の言葉で話してくれません

21.一対一の恋愛関係がクソゲーに思えて仕方ありません
22.ぼくと家族が生き抜くためには何が必要でしょうか?
23.彼氏の仕事を応援することができません
24.理想や情熱を持って働きたいというのは贅沢なのでしょうか?
25.問題のある先輩に、どのように対処すれば良いでしょうか?

26.色々な情熱が薄れ、気力が萎えて困っています
27.母親と、母親の夫との距離感がつかめません
28.相談というのは、どうやつてすれば良いでしょうか?
29.悲観的な夫に腹が立ってしまいます
30.勝手に悪人のレッテルを貼られて困っています

31.先が見えず不安です。自信を持つにはどうしたら良いでしょうか?
32.男前が好きな自分を認めても良いでしょうか?
33.押さえ難い復讐心があります
34.好きな女性が進路に悩んでいます








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