2014年1月9日木曜日

喜劇は決まり事を理解してると100倍面白くなる!という話






2月の「オペラ大好き」の公演に向けて
現在ドンパスクワーレというオペラを読んでいます。
読んでいる、というのは専門用語的なもので、「楽譜を勉強している」みたいな意味合いで使います。


ついでだからもうひとつ書くと、「さらう」っていう言葉も使います。
これは「練習している」みたいな意味です。
「今ドンパスクワーレさらってるんだよね僕」みたいに使います。
ドンパスクワーレさんを誘拐してるという意味ではありません。


ドンパスクワーレは、僕たちはよく略して「ドンパス」なんて呼んだりしますが、コッテコテの喜劇です。


ぜひ3月の公演にいらしていただいて、喜劇とは何ぞや、に触れていただきたいんですけど
そうでなくともこれを知っていれば喜劇をもっと楽しめますよ、という約束事を書いてみます。
このオペラに限らず、ヨーロッパの喜劇はこのお約束事の上になりたっていることが多いです。
特に古いものは。




ドラマは朝から始まって夜で終わる


オペラの喜劇作品では、ドラマが始まって終わるまでが1日というお約束があります。
ほとんどの作品で、幕が開いた最初のシーンが朝で、幕が下りるフィナーレが夜になってます。

フィガロの結婚も、ウィンザーの陽気な女房たちも、愛の妙薬も、
ぜーんぶ朝から夜までの出来事です。

話の筋がごちゃごちゃしてきて、
「あれ、さっきの出来事からこれ、何日後の話なの?」と疑問になっても心配ご無用。
迷うことはありません。
だって、さっきの出来事も今の出来事も1日のうちに起きてることなんですから。
それくらいドタバタしてるのが喜劇、ってことですね。




キャラクター設定はなんとなく決まってる


喜劇にはたくさんの登場人物が出てくることがありますが、
実は基本的なキャラクター設定というのはほとんどどの喜劇にも共通して決まっています。
どんなものがあるのかというと・・・・


  パンタローネ   → 年寄りの商人。ケチで色ボケだけど騙されやすい。
  コロンビーナ   → 若い娘。肉体的魅力があって知恵に長けている。
  イルキャピターノ → 偉そうな軍人だけど臆病。
  イルドットーレ  → 博学で饒舌な医者。口をつく言葉はほとんどデタラメ。
  インナモラーティ → 恋する若者たち。最初は障壁ある恋だが、最後には結ばれる。

こんなかんじ。
これらのお決まりのキャラクターは「ストックキャラクター」と呼ばれるみたいです。 

なんでこんな定型の人格を持った登場人物ばかりかというと、
喜劇の起源にその理由があります。


今日の喜劇=コメディの源流となっているのは、16世紀中頃にイタリアで生まれた
「コメディア・デラルテ」と呼ばれる即興仮面劇です。
即興劇なので、仮面をつけた役者たちは舞台上で、即興的に演技をしていました。
そのときに、何の約束事もなく即興をしたのでは収集がつかなくなります。
そこで採用されたのが、ストックキャラクターというわけ。
毎度お決まりの個性を持った登場人物だから、即興で劇をしてもなんとなくまとまる、と。

おそらくある時代の日本の子供たちが「水戸黄門ごっこ」をやっても
物語に破綻無く印籠が出るところまでたどり着けるのと理由は一緒です。


ということで、喜劇作品をみたときには、まずその登場人物が
ストックキャラクターだとしたらどれに当てはまるかを考えてみると
途端に物語を追いやすくなります。



ドンパスクワーレにストックキャラクターを当てはめてみると・・・?


ここからちょっと応用編です!

ドンパスクワーレの主要登場人物は4人です。
大体こんな設定。


  ドンパスクワーレ(男) → 資産家の老人。エルネストの伯父で、急に結婚を決意。
  ノリーナ(女)     → 美しい未亡人。エルネストに恋をしている。
  マラテスタ(男)    → パスクワーレの主治医でエルネストの友人。
  エルネスト(男)    → パスクワーレの遺産相続権を持つ。ノリーナに恋をしている。


では、今度僕がやるオペラ「ドンパスクワーレ」の登場人物を
ストックキャラクターに当てはめてみるとどうなるのか見てみましょう。


  ドンパスクワーレ → パンタローネ
  ノリーナ     → コロンビーナ
  マラテスタ    → イルドットーレ
  エルネスト    → インナモラート


そうするとなんと、大体のあらすじも見えてくるんですよ!

ノリーナ(コロンビーナ)とエルネスト(インナモラート)が恋仲なんだけどドンパスクワーレ(パンタローネ)になにかの理由で邪魔されている。 
マラテスタ(イルドットーレ)はドンパスクワーレの友人であるが、ノリーナはマラテスタを自分の策略に巻き込む。 
ケチで威張りやな商人であるドンパスクワーレの色欲まみれな性格を逆手に取ってノリーナは彼を策略にかけ、万事めでたしエルネストとの恋路を成就させる。

ね、簡単ですよねっ!
大体の喜劇作品はキャラクターの組み合わせによっての変化はありますが、
おおむねこんなストーリー展開で進んでいきます。





ほかにもいろいろ、知ってたら面白いことあるんですけど、
長くなりそうなのでまた次の機会にご案内します!




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