2015年5月5日火曜日

クラシック音楽にとっての競合を考えてみる、という話。







発売を待ちわびて買って、二日で読みおわったこの本。
数日前から読み返しています。


ZERO to ONE / ピーター・ティール

本のはじめの方に
「非独占企業は競合の認識が甘く、独占企業は競合のいない分野で勝負する」
的なことが書いてありました。

実情非独占状態となっているビジネスは、自らの独自性を甘く見積もって
本来ならば競合がたくさんいるのにもかかわらず、それらを認識していない。
逆に独占状態のビジネスは、競合の分析を綿密にし、
競合のいない分野で収益を上げながら、「競合企業との激しい競争のなかにいる」と
独占状態を悟られないようにカモフラージュするのだ、と。



僕はクラシックの音楽家なので、その立場から考えますと・・・。



僕たちって心のどこかで、クラシックは尊く価値のある芸術だから
その価値は(なにもしなくても)必ず人に伝わるし、
人は音楽無くして生きてはいけないので今後も人類史にクラシックありきで
時間は進んで行くはずだ、みたいな考えがあると思うんですよね。

僕自身、そんな絵空事ありえないと考えていますし、
この情報過多な社会においてのクラシックに対するニーズの小ささは理解しているつもりですが、
それでもやっぱり心のどこかで、
「自分が好きな、このクラシックという存在を世の中も愛してくれるはずだ!」という
ふわっとした頼りない思い上がりみたいなものを信じているところがあります。



でも、そう甘いことばかりいっててもクラシック音楽家が食えるようにはならないし、
クラシックのマーケットもどんどんちいさくなるだけなので、
ピーター・ティールさんがおっしゃるように、
では実際どんなものがクラシックの競合になっているのか、
試しに考えてみたいと思います。




●芸術系
絵画、彫刻、インスタレーション、バレエ、コンテンポラリーダンス、演劇、ミュージカル、コント、漫才、歌舞伎、能、狂言、文楽、パフォーマンスアート、落語、映画、民族舞踊


●音楽系
ジャズ、ジャパニーズポップス、アイドル曲、洋楽、ロック、アニメソング、クラブミュージック、ゴスペル、R&B、ソウル、フォーク、カントリー、ヴォーカロイド、レゲエ、イージーリスニング、インディーズ


●文化お稽古系
バレエ、茶道、華道、香道、書道、料理、油絵、日本画、墨絵、着付け、ゴスペル、ジャズダンス、タップダンス、演劇ワークショップ、社交ダンス、ポップスやジャズの楽器レッスン、パッチワーク、編み物、俳句、短歌、川柳、囲碁、将棋、写真、アクセサリー製作、三味線、詩吟、民謡、シャンソン、アロマ


●非日常を体験出来る系
テーマパーク、ホテル産業、レストラン、観光業、美術館、博物館、各種体験教室(アウトドア含む)、海外旅行、図書館、バレエ鑑賞、演劇鑑賞、ミュージカル鑑賞、コンサート・ライブ、野外フェス、映画館、アイススケートショウ、宝塚歌劇団、ジャニーズ、アイドル、スポーツ観戦


●大人なイメージで嗜んでたらドヤ顔できる系
ワイン、コーヒー、紅茶、ウィスキー、歴史、葉巻、ガストロノミー、文学、美術、ジャズ鑑賞




重複してるものもいっぱいありますし、「これ、本当に競合なの?」みたいなのもあるかもしれませんが。

音楽のジャンルそのものの競合もあれば、
よくよく考えてみれば「非日常に浸るための場所」という観点の競合も成り立ちます。
あと上には漏れてますけれど、余暇の時間を割くものとしては
テレビ、インターネット、ラジオなんかも立派な競合です。

クラシック音楽は物理的な商品ではないですし、
人々の暮らしをなんらかの形で便利にするようなサービスやテクノロジーでもありません。
いわば完全なる嗜好品です。
となると、人々が自分の持っている余暇時間を投下する対象は、
すべてクラシック音楽の競合になりうるのではないでしょうか。
そして、その選択肢が無限に増えているこの時代、実はこの市場、
人々の細切れな時間の奪い合いで、かなりのレッドオーシャンなのではないでしょうか。



いま僕らは、人々の余暇に照準をあわせるとしたら
ジャニーズやAKB、はたまた旅行や外食産業と戦わねばいけないようです。
うーむ。
どうやったらクラシック音楽にとってのブルーオーシャン見つかるかな・・・


余暇、という市場ではない場所を探すのがひとつのヒントかもしれません。


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