ゼロ・グラビティGravity
監督 アルフォンソ・キュアロン
出演 サンドラ・ブロック
ジョージ・クルーニー
◆美しい映像効果を存分に楽しむこと
ただただ驚嘆すべきなのは映像の美しさと緊迫感。
ストーリーの組み立て方とかはもう二の次です。
僕が本作を見たのは西武線豊島園駅近くにある「ユナイテッドシネマとしまえん」にて。
でっかい最新鋭のシネコンで、IMAXという設備が入っていて、
そのスクリーンにて3Dでみました。
もう、この設備がすごいすごい。映像も音響も度肝を抜くクオリティでした。
映像の鮮明さはもちろんですけど、リアルよりも滑らかに見える映像に息をのむおもい。
サラウンドの音響は、どんなに小さな効果音でも距離感を感じさせる聞こえ方。
ある程度設備の整った上映館でないと、この映画の魅力は受け取りきれないと思います。
それくらいに、映像と音響と目の前いっぱいに広がるスクリーンという環境的要素が
鑑賞している僕を宇宙空間にひきずりこむ役割を果たしていました。
◆立てた予想がどう終結していくのか、を息をのんで見守る
主人公はサンドラ・ブロック演ずるライアン博士。
無粋な見方ですけれど、「主人公が途中で死ぬはずが無い」という予測を立てて
僕は映画を観はじめました。
美しい宇宙空間に浮かぶ美しい地球の映像。無音の世界。静寂。クリーンで恐ろしい。
2001年宇宙の旅へのオマージュを感じさせる冒頭映像はとても平和で、
その後繰り広げられるサスペンスの雰囲気をみじんも感じさせません。
ところが十数分後には絶望的な展開に。
船外活動をしていたライアン博士たちのシャトルに、
高速で地球の軌道上を移動する宇宙ゴミが膨大な量接近しているとヒューストンから警告が。
避難をしようとするがあえなく宇宙ゴミがシャトルに衝突。
ライアンとコワルスキー(ジョージ・クルーニー)は宇宙空間に投げ出されます。
宇宙空間に命綱も無く投げ出されるなんて…
想像しただけで恐怖。
錐揉み状態で地球から遠ざかっていくライアンはパニック状態です。
そのようすが、顔面どアップの映像でスクリーンいっぱいに映し出されます。
彼女の過呼吸がこっちにも映りそうなくらい僕の心拍数も上がります。
でも、主人公だから、きっと、いや、ぜったいに、彼女は助かるはずだ。
このまま宇宙の彼方へ飛ばされて終わるだけの映画なはずが無いんだ。
そんな予測を立てながら画面を見守っても、
グルグル回転して母船から遠ざかるライアンの発狂寸前の顔しか見えない…。
こっちの胸が爆発しそうなくらいのストレスを感じました。
案の定、ライアンは、物語の主人公だから、死ぬこと無く地球にたどり着くのですけれど、
「どうやって地球にたどり着くのか」
この経過が緊迫感ある展開によって描かれていきます。
もうね、スタート地点に戻っても停止も減速もしないジェットコースターに
永遠にのせられているような気分ですよ、映画を観ているあいだ中。
ということで、1時間半の上演時間はあっという間に過ぎました。
ほんとうに一瞬の出来事だったかのごとく。
このスリルを味わうだけでも、一見の価値ありでした。
◆映画の新しい境地
もちろん、ストーリーの展開や、キャラクターの成長といった
従来の映画的楽しみもしっかりと盛り込まれています。
コワルスキーの大らかでコミカルな性格が、ライアンの閉ざされた心を癒していく過程とか、
戯曲として楽しめる要素もたくさんちりばめられています。
でもね、シェイクスピアを映画や絵画にトランスレートしても作品として楽しめるでしょうけど、
「ゼロ・グラビティ」を演劇になおしても、僕が保障します、ぜったい面白くない!!!
それくらいに、SFXの手法と3D上映という「映画の語法」が
この作品を現段階で唯一無二のものたらしめています。
そう、映画の語法を思う存分楽しむための作品と言って過言ではないと僕は感じました。
ってことで、この作品はブルーレイでレンタルしてきても、
すこしは面白みを感じられるかもしれませんが、満足いく視聴体験はできないことでしょう。
映像による別の人生の追体験が、ここまで僕自身に対して、ストレスを与えてくるとは思わなかった。
はじめての体験でした。楽しかった。
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