東京アニメライブ(http://tokyoanimelive.com/)というサイトの大友克洋氏についての記事の中で、
こんなに魅力的なフレーズをみつけたので引用します。
“こういった少し調べれば分かるような知識があるだけで作品は何倍にも面白くなる。目の前にある作品をただ「面白かった」で済ますのではなく、「なぜ面白かったのか」と一歩先まで踏み込んで考えることで新しい世界が広がるのである。”(「AKIRA」大友克洋とは誰か? | TokyoAnimeLive | クリエイティブアニメニュース http://p.tl/N1F8)
世界にはたくさんの創作物や現象が溢れているけれど、
それらはまさに「少し調べれば分かるような知識があるだけで何倍にも面白くなる」ものばかりです。
だからこそ、世界をより面白がるためには「少し調べてみる」という
一歩だけ能動的な行動が必要になってきます。
現在日本のテレビ界を席巻しているバラエティ番組の手法は、
その面白さを出演する芸人や芸能人のキャラクターに頼るところが大きいです。
雛壇に座るたくさんの人々のキャラクターを視聴者が理解していることで
初めて笑いに繋がるという場面が多い。
日本語が堪能な外国人が急に日本に来ても、日本のバラエティでは笑えない、
何が面白いのか分からない、と聞いたことがあります。
出演者のキャラクターという文脈が分かっていないと、
ひとりの些細な一言で会場全体が爆笑するという現象についていけないのでしょう。
マツコデラックスがセーラー服で出てきても、ただ大きな男性がコスプレしているという情報しか読み取れない。
日本のバラエティの文脈が理解できない人が、それを理解するためには
「少し調べてみる」だけでは到底確保しきれない情報が必要です。
分からないままテレビを見続けて、自分の頭の中に各芸能人の立ち位置や役割を理解した勢力図みたいなものが出来上がってこないとなかなか難しいですよね。
ところが、世界中に残る伝統芸能や伝統作品、あるいはそれを下敷きにした創作物一般の場合、
「少し調べてみる」だけで、別の世界に来たような錯覚を覚えるほど、
格段に面白さが増す傾向にあります。
キリスト教の慣習や江戸時代の風俗文化、時代による結婚観の違いや
コメディアデラルテの登場人物とその手法、などなど。
ウィキペディアでもなんでも、ネットで簡単に検索してひっかかるほどの
簡単な知識であっても、シェイクスピアやモーツァルトを鑑賞する手助けになってくれます。
ゴッホの生い立ちやピカソの恋愛遍歴など、作品に直接関係ない知識でさえも
僕たちの好奇心をかき立ててくれるし、それが結果として作品の面白みをましてくれることに繋がるのです。
日本にいて、日本の近代のテレビ番組の面白さに浸かっていると、
一歩だけ能動的に自分で「少しだけ調べてみる」ことで何倍にも面白くなるような事柄の楽しみ方が訓練されないまま大人になってしまいがちです。
日本のアニメーション作家の技法傾向やそれぞれの交友関係を語るような人種は、世間的にオタクのレッテルを貼られて表舞台から退場させられるか、あるいは表舞台に於いてアウトロー的な役割を担わされるのが常。
だけれど、世界中に溢れている創作物や現象というのは、それに対して少しだけでもオタクになった方が面白みが倍増するのだ。
オタクが現象としてもてはやされた時代に特異に映ったのは、
そのオタクという人種の「見た目的な」気持ち悪さや根暗さだとよく言われるけれど、
実はその中で「オタクの能動性」を変なものとして感じる世間のアンテナがあったのではないかとふと思いつきました。
その頃の日本のカルチャーは、すでに芸能人文脈に依存するバラエティ番組が蔓延していたし
バブル期特有のエンターテイメントは、お金とセックスの予感を絶妙にミックスしたものだったから、「少し調べてみる」ような楽しみ方は特に必要としていませんでした。
完全受動的な面白さがメインだった時代に、少しどころかとことん能動的に楽しんでいる人種はさぞかし摩訶不思議な存在として映ったことでしょう。
僕なんて、普通からしたらちょっとしたオペラオタク、クラシックオタクです。
でも世間と僕との違いは、オペラやクラシックについて「少しだけ調べる」と面白くなると知っているか否かだけ。
だから僕は、「これ知ってるだけで、オペラやクラシックが何倍も面白くなりますよー」という知識を、このブログや自分のコンサートの中で、許されるだけ書いたり喋ったりしてアウトプットしていこうと思っています。
ちなみに、一番上の画像は、
世界的な映画監督であり、毎週ニューヨークのジャズバーに出演するクラリネット奏者のウディ・アレンが、自分の映画の女神=ミューズであるペネロペ・クルスに耳を塞がれている、という図。
もう一回見返してみてください、さっきよりちょっと面白く感じたでしょ?
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