僕の住む街に新しく出来たカフェ&パブ
その営業の様子が、街のニーズとあまりにかけ離れていて
少しだけ考え込んでしまいました。
キーワードは
「独自性は絶対評価でなく、相対評価によって決まる」
僕が住んでいる国立は、都による文教地区指定を受けており、
パチンコや風俗産業がありません。非常に気分がよく住みやすいです。
学校もたくさんあり、その中で最たるのが一橋大学です。
また、大きなマンションもいくつかあり、同時に昔からの大住宅もたくさんあります。
そのため、国立に住む人口は、学生と40代以上の大人が割合的に多く、
人口ピラミッドの最も幅の広い年代は40代で、
20代と60代の人口が大体同じ数になっています。
街には多くの飲食店や雑貨屋などがあってそれぞれ面白いのですが、
個人経営系の店舗は年配の顧客に絞って営業をされているようだし、
大学生の若者はスタバやモスバーガー、ファミレスなどのチェーン店を利用しています。
そんな国立に、最近新しいお店がオープンしました。
カフェ&パブという営業形態をとっているようで、昼はランチとカフェ営業、
夜はビールを主軸として軽食を出すパブ営業をしています。
以後、A店と呼びます。
このお店、国立という街のニーズを理解していないような気がしてなりません。
◆金のない若者か年配の富裕層がこの街の構成員だ
大学生はお金がないのが通例です。
だから、ガストやバーミヤンやモスバーガーでお茶をしています。
ちょっと自分にご褒美な日には、スタバでケーキも食べています。
ガストのドリンクバーは約340円で各種が飲み放題。
スタバのドリップコーヒーはショートで300円でWi-Fiが使える。
一方A店では一番安いコーヒーが480円。おかわりもなくWi-Fiもない。
年配の富裕層の方は街のレストランや古くからの喫茶店を利用しているようです。
あるレストランではティータイムに1000円程で紅茶がおかわり自由。確かスコーン付き。
ある喫茶店では自家焙煎をした豆を目の前で挽いてくれて700円ほどのコーヒー。
一方新しいカフェ&パブはこだわりの“挽き豆”をドリップしてくれて480円。
◆若者は「語る場」か「ネット環境」を、年配者は気分のいいサービスを求めている
新しく出来たカフェ&パブがダメだということを指摘したいわけではないのです。
ただ、自分が新しく事業に参入するときには、現状を把握した方がいいんじゃないかな
と思うのです。
若者は、特に大学生は、友達とおしゃべりをする場所を求めています。
暑くなく、寒くなく、お腹が減ったらなにか安いものが食べられて、
出来ることなら飲み物がおかわり自由だったら嬉しいのです
あるいは、外でのミーティングやレポート作成のために、
Wi-Fi環境と充電用の電源を求めていることもあります。
ファミレスやファーストフードでは前者が提供され、
スタバみたいな場所では後者が提供されています。
国立に住む年配者は、比較的経済状況に余裕のある世帯が多いです。
昔からこの街に住み、この街の穏やかさと共に暮らしてきました。
そのため飲食代に多少の値が張ることは厭わず、
そのかわり美味しいものと気分のいいサービスを求めています。
この街で古くから営業している店舗ではそれが提供されています。
あるいは、一見新しそうなカフェなんかでも、
内装やメニューに手をかけ、アルバイトの教育もしっかりして、
街の雰囲気と店舗の雰囲気が乖離しないように心がけているのがわかります。
◆要素を並べてみると平凡である、ということはよく起こる
そんな中で営業を開始したA店のスペックはというと
・コーヒーは豆にこだわっているようだがすでに挽かれた豆を使用
・注文ごとにネルドリップ
・コーヒーは特に飛び抜けて美味しいという印象はなかった
・Wi-Fi環境はない。電源を利用できる様子もない
・営業は男性店主と女性アルバイトでまわしている。アルバイトはそれほど慣れていない
・内装の様子からして、20代後半から40代ほどのお酒好きなお洒落な人を顧客として想定している
料理は食べていないので美味しさはわかりませんが。
ほらね。完全にこの街のニーズからずれているでしょう。
案の定、お客さんの入りは少ないんです、と店主さんが仰ってました。
- 目の前で注文の一杯ごと豆を挽いてくれる店が他にある
- 自家焙煎で品種ごとに味を追求している店が他にある
- たとえ紙コップ提供でもパソコンを使う環境が整っている店が他にある
- 熟達したサービスを快く受けられる店が他にある
- この街の主な構成員は金のない大学生か年配の富裕層である
おそらくこれが、客入りの少ない理由でしょう。
◆好むと好まざるとに関わらずカフェに求められている役割は変わってきている
どんな店でも、カフェと看板を掲げた瞬間に、お客さんから求められるものが
最近では変化してきてしまっているのです。
それは
・飛び抜けて美味しいスイーツか食事
・パソコンを使っても不自由でない環境
のふたつ。
【東京】スイーツが豊富でおいしいカフェをご紹介PLACEHUBhttp://p.tl/9xtY
渋谷区内の電源カフェ 電源カフェhttp://p.tl/-qTp
コーヒーの美味しさを求める人は、コーヒー専門店にいきます。
バリスタさんがいる専門店です。
若きバリスタが変える東京のコーヒー メトロミニッツ Metro min.http://p.tl/NGhh
これは、カフェ業界の流れとして抑えておくべき情報です。
「ウチではネットなんてせずに、美味しいコーヒーと食事を楽しむ場所にしたい」
と思うのなら、コーヒーと食事の価値を必死に高めなければいけません。
近年のカフェの武器である「パソコンが出来る環境」を捨てたのですから、
その穴は別の価値で埋めなければいけないのです。
◆ビジネスにおける評価は相対評価によって決まる
どんなビジネスも、それひとつだけでは成り立ちません。
「ウチ独自のコンセプト」があるのはいいですけど、それが周りと比較したときに
頭ひとつ分飛び抜けていないと、きっとお客さんは集まらないのです。
独自性は絶対評価ではなく、相対評価によって決まります。
あのお店は、他では食べられないくらい美味しいモンブランを出すんだよ!あのお店は、この街では唯一自分の農園を持ってるコーヒーショップなんだよ!
そういう「他では提供されない価値」があるから人が集まるのです。
東京で勝負をしたいなら、比較する“他”とは東京全域になるでしょうし、
ある街で勝負をしたいなら、ある街の中で飛び抜けた価値を持たねばなりません。
いやー、これを考えながら、本当に身につまされる話だなと思いました。
ちょっと冷や汗がでます。
独自性は絶対評価ではなく、相対評価によって決まる。
僕にだってまるっと当てはまるじゃないですか。
歌手としての僕がいくら「他とは違う、新しいコンサートをやりますよ!」と言ったって
それが果たして本当に「新しいのか」「面白いのか」を決めるのは、
他のコンサートと僕のやっていることをそれぞれ見て比べるお客様なのですから。
僕がどれだけ自分の独自性を“叫んだ”ところで、お客様が
「それ他と一緒だし、しかも歌が上手くない」という判断を下されれば
三流の歌い手として評価されるわけです。
人の振りみてなんとやら、なので、肝に銘じておきたいと思います。
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