「音楽業界が衰退した原因は、〇〇〇だ」の問いはナンセンスだ」
というエントリーを書きました。
その記事で書いたように、音楽業界全体のことを考えていても、
僕の思考はどこかでクラシックに戻ってきてしまいます。
という訳で今回は、
戦略的な細分化をクラシック市場でどう導入するのか
を考えてみます。
●クラシックの細分化は多岐に渡る
前回の記事では、
「音楽業界が「多種多様のジャンル」に細分化された結果、競争力がなくなった」
という論で話を進めました。
で、その細分化を戦略的に導入して市場経済的に勝利をあげているのが
AKB48を中心とする「48グループ」だということも指摘しました。
つまり、ジャンルの細分化によって引き起こされた市場の分断を利用し、
そのいちジャンルでしかないアイドル市場においてグループで戦いながらも
そのグループをさらに「個人」にまで細分化することにより、
顧客獲得の新しいシステムを機能させたわけです。
ジャンルの細分化によって、市場に集まる消費者の消費動向は自ずと画一化される訳ですから、
それを逆手に取ったいい戦略といえますよね。
クラシック音楽はまず、「クラシック」という大枠で音楽業界の中で分類されています。
で、この時の「クラシック」というのは不思議な呼称で、
つまり消費市場的にいえばそこに「現代音楽」なんかも含まれているのです。
さらにいえば、「現代音楽」にも「古典的な作品」と呼ばれるものがあって、
これはもう名は体を表すなんてどこ吹く風といった構造をしていますね。
なので、クラシック音楽と呼ばれる営みのなかでさらに分類される作品のジャンルは、
・時代(古楽、古典、ロマン派、現代など)
・国(イタリア、ドイツ、フランス、日本など)
・形式(コンチェルト、シンフォニー、オペラなど)
などなど。上の用にかなり大ざっぱで暴力的に分けても最下層では11個に分類されて、
たとえばそれの組み合わせを考えたら、2つの組み合わせだけでも55通りになって、
3つの組み合わせなら165通りで・・・と、
細分化と組み合わせとを無限に考えていくと、気の遠くなるようなニーズの数が考えられます。
で、たとえばクラシックならオペラしか聞かないとか、
ドイツもののシンフォニーしか聞かないとか、
あるいはオペラでもイタリアオペラだけしかダメとか、
シンフォニーでもカラヤン×ベルリンフィルの録音でしか聞かないとか、
本当に細々したところまで細分化できてしまうのが、クラシックの特徴ですね。
これは、それほどまでにクラシックという母体が巨大だということの裏返しでしょう。
イタリアオペラしか聞かない!と言い切っている人に、
じゃあ同じイタリアの作曲家だからといって、
サルヴァトーレ・シャリーノを聞かせたところでなかなか共感は得にくい。
「同じクラシックじゃないか!」といって、ひとつの土俵には乗せにくい。
同じ「クラシック」という大樹の下に集まっていながらも、
それぞれが好みの木漏れ日に戯れ、別の木漏れ日には見向きもしない。
あるいはあからさまに嫌悪感を表明する。
これが現在の「日本の」クラシック市場の状態でしょう。
あと、加えて「地域的細分化」も起きています。
大きくは「東京とそれ以外」に切断され、
あるいは「関東と関西」に切断され、
「ホールのある街とない街」という切断も起こります。
どの地域に住むのかという選択は、日頃接触する「生演奏」の種類や質に
大きな違いをもたらします。
関東で有名なあの人が、関西では全く知名度がないなんてことはままあります。
まあこれは、生演奏の性質を考えれば、当然のことかもしれません。
●必要なのは「システム」だ
では、なぜAKBは、
・ゆきりん
とか
・ともちんは気に食わなかった。さしこには投票した。
みたいな消費者を全部抱き込んで、AKBの、あるいは48グループの商品を
買わせることができているのでしょう。
答えは簡単です。
「そこにAKBというシステムが在り、有効に機能しているから」
に尽きます。
この、「有効に機能するシステム」が、クラシックには存在しないのです。
あと、このタイミングでなんですけど一応断っておくと、
僕は別段48グループの熱狂的なファンという訳ではないです。
押しメンも特にいないどころか、主要なメンバーの名前さえもおぼろげです。
僕が惚れているのは、そのシステムです。
一見すると「クラシック」という大きな装置で、
その下層にあるさまざまに分類されたニーズを統合できてそうですけど、
いやいや実状は全くそんなことはなくて、
聴く音楽の種類ごとのまとまりで分断が起きているし、
あるいは住む地域ごとで分断が起きています。
声楽家Aさんのファンが同時に、声楽家Bさんのファンだということはありますが、
声楽家BさんのファンがBさんの友人のヴァイオリニストCさんのコンサートには
全く興味を示さないということはざらです。
そもそも消費者側にはBさんとCさんが友人同士で、
時たまCさんの地元でジョイントコンサートをやっているという事実が
全然伝わっていなかったりします。
もしもその情報がBさんCさんそれぞれのファンに伝わっていたら、
もしかしたらファンの交流が生まれるかもしれないのに・・・・・。
クラシックに於ける、こういったファンの交流を促す装置は、
以前はテレビ番組や専門情報誌でした。
もちろんそれらの情報媒体は、現在でも機能しています。
しかし、テレビや紙媒体以外、つまりWEB媒体に於いて、
こういったマッチングを促すようなサービスが、果たして在るでしょうか。
ジャンル分けされた末端、演奏者個人個人を応援するファンを、
うまーいこと救い上げ統合し、数の上でも経済指標的にも
可視化されたムーヴメントとして外にアピールするようなシステムが、
クラシック音楽業界には欠落しているのです。
その結果市場は大きく分けて
・録音を聴く人(CDやレコード、DVDの消費者)
・大手の企画する演奏会に行く人(各オーケストラ、各歌劇団等の会員)
・個人演奏家を聞く人(演奏家の知人友人や、少数のコアなファン)
の3つに分裂させられています。
なんとかしてこの大きな分裂を
統合するような装置が、システムが
発明できないでしょうか。
これが僕の常々考えていることです。
では、そのシステムはどういった性質だといいのかを、
次に考えてみます。
yy
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