2013年8月29日木曜日

8/29 「音楽業界が衰退した原因は、〇〇〇だ」の問いの立て方はナンセンスだという話

たまーにネットのまとめとかで見るのが

音楽業界が衰退した原因は、〇〇◯だ

みたいな指摘です。
この◯の中には、「ライブハウス」「レコード会社」「アーティスト」「秋元康」とか
色んなワードが入るのですけれど、
そうした指摘記事に共通してナンセンスなポイントがあります。

それは

音楽業界とはつまるところなんなのか、を明確にしていないこと

だと思います。






●すべてを引っくるめて「音楽業界」としたって話は進まない

音楽と一口に言ったって、ありとあらゆる種別の表現があるのです。
僕なんかは声楽を専門としてるから、音楽と聞いて一番最初に思うのは
「クラシック」のことですし、ずっとさだまさしが好きだから、
次に思うのは「60年代から80年代前半までの日本のフォークソング」なのです。

「ロック」以外は音楽と認めない、という人もいるでしょうし、
いやいや「メタル」以外は「ロック」と認めないという人もいるでしょう。(実際にいた)

レゲエだってR&Bだってシャンソンだって演歌だって、ぜーんぶ音楽です。
それは、「服飾業界はダメになった」という論を、
着物もファストファッションも高級ブランドも十把一絡げに展開するのと同じです。

それをク◯味噌いっしょにして、「なになにのせいで日本の音楽業界はダメになった」
といったところで、何かを言っているようで何にも言ってない、という状況に陥ります。

「そういうことを言ってるんじゃない、レコードやCDの売り上げ低下に見られる
 音楽市場の衰退のことを言っているんだ」
みたいな反論があるかと思いますが、では、高度経済成長とバブル以降、
日本の中で衰退していない市場とは一体いくつあるのでしょうか。

高齢化が極度に進み、出生率が下がり、人口が減っていくことが予想される先進国において、
経済成長期よりも各市場がやせ衰えていくという現象は、至極当然のことだと思います。




●本当の問題点は「細分化」されたこと

市場がやせ細ったってそれは自然なことだからー、だけではあまりに不毛なので
もう少し考察を進めてみます。

バブルがはじけたこととか、人口が減少傾向にあることを除いてみても、
「なんとなーく音楽産業全体が衰退してる感じがする」のはなぜなのでしょうか。

僕が思うに、「音楽業界」を一言でいえなくなっているほどに
市場に存在する「音楽」が細分化されたことが原因なのではないでしょうか。

テレビかラジオしか音楽に触れる機会がなかった時代は、
「それほど興味がない」ようなジャンルの音楽も、
「それ以外はなかなか手に入らないから」という理由で、なんとなく消費されてきました。
けれど現在、レコード会社の種類が増え、CDが安価になり、配信はもっと安価で、
もっといえばネットで「どんな音楽も」タダで手に入るし、
生演奏もちょっと探せば日本中のあちこちで聞くことが出来ます。
ここでの指摘で重要なのは、「ネットでタダで聞ける」点ではなくて、
あくまでも「どんな音楽も簡単に手に入る」点です。



つまり、市場が細分化されてしまったのです。
「音楽業界」とひとくくりで語れたはずの市場が、
「クラシック」や「ジャズ」、もっといえば
クラシックの中でも「古楽」や「オペラ」、「ピアノ曲」というほどに、
ジャンルの中でもさらに趣味嗜好によって断片化されてしまったことにあります。
細分化されたことにより市場それぞれの絶対数が減少するにつれて、経済循環が停滞し、
あるいは各市場間の消費者や価値観の交流が失われ、市場が拡大するきっかけが失われる。

そして、その点について無自覚にクリエイターもプロデューサーも
独自の表現を突き詰め続け、しまいには「なんとかのせいで音楽業界は衰退した」と
全く見当違いなところをつつくのですね。


●細分化を味方に付ける

市場が細分化したことは、なんとなくいままで引っくるめて表せていた「音楽業界」の
実体を形骸化させました。
その形骸化が起きた原因はひとえに「細分化に無自覚だったこと」だと思います。


この現状を打開するためには、つまり音楽業界を再び元気にするためには、
「戦略的に細分化を利用すること」が重要なのではないかと考えています。


実際、攻撃的な細分化を利用して、成功を収めている音楽市場があります。
ずばり

アイドル

です。

AKB48は「会いにいけるアイドル」として、秋葉原にある専用劇場での公演をスタートさせ、
握手会や投票制度といった相互コミニュケーションシステムのなかで確実に顧客を獲得し
インターネットを活動拠点とした自治的活動をするコアなファンを盤石としてテレビへ進出し、
現在では1日を通して見ることのない日がないくらいのムーヴメントとして、
日本のエンターテイメント界に君臨しています。
これはパフォーマンスのクオリティがどうこうというよりは、システムのもたらした勝利です。


AKBを中心としたさまざまな48グループは、全体としてファンを獲得するというより、
「押しメン」に代表されるように、ファンがメンバーのうちのひとりを特別に応援し、
そういった応援形態が集結して大きな流れになっている、という点が特徴的です。

ピンクレディーのミーちゃん派ケイちゃん派とか、
キャンディーズのラン・スー・ミキの誰がいい、とかの高度な応用だと思えばよろしい。

AKBを代表とする秋元康プロデュースのアイドルブループ群は、
その所属メンバーを増やし、そのメンバーひとりひとりにストーリを与え、
それをファンが直接的に吸収し応援することによって、
メンバーひとりのファンが500人でも、メンバー自体が300人いることにより
結果として10万人規模の市場が確保できているのです。


つまり

グループをグループという1の視点でプロモーションするのではなく

あえてグループを個人に細分化させ、ひとりひとりにファンを獲得することによりその細かい数字をひとつにまとめた結果、大きな市場を確保する

という手法をとっているのです。
これこそ、戦略的な細分化の、最も有名で時代に則した成功例でしょう。



yy

0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...