2012年9月9日日曜日

9/9 僕が若い人にオペラを見てもらいたい理由

こんにちは、山野靖博です。

今日はちょっと真面目なエントリーを。

僕がオペラ歌手クラシック歌手という生き方を選択したからかもしれませんが、
いまからの時代を造り上げていく僕と同じ世代の若い人には特に
オペラやクラシックコンサートを聴いてほしいという思いがあります。

音大に進学した人ならきっと誰もが一度はぶつかる問いがあります。
「娯楽が多様化した現代において、わざわざ見に行くほどオペラの価値はあるのか」
少しずつ考えていきますね。





まずは全員アンケート。

“あなたはオペラ(クラシック音楽)が好きですか?”
観たことがなくても答えてください。

きっと答えは3通りです。




・すき
・きらい(興味がない)
・音楽はわからない




上の二つはわかります。
好きな人には、なんとなく、も含めてそれなりの理由があるでしょうし、
嫌いとか興味がないという人もその点は同じでしょう。
僕が好きなことをすべて他人も好きにならなきゃいやだ!ということもないので
オペラやクラシックが嫌いという人の意見も、そうだよなーと納得します。

でも、ちょっと悲しいのが「わからない」というレスポンス。
「僕は音楽はわからないから〜」っていうあれ。

しかし、人間というものはそうらしいです。
そうらしいというのは、「わからないことに対しては不安を感じる」ということ。
特にオペラなんかは難解な感じがするので、触れているとわからないことだらけで
とても不安で居心地が悪くなるのでしょう。
そういう状態があまり快くないから、自分からは好きこのんで触れはしない。

でもこういう研究結果もありますよ。
ザイオンスの熟知性の法則http://www.e-ssp.net/mk/mkla1_9.html
心理学のお話のようですがつまり、人は合う回数が増えるほど、
相手のことを知れば知るほど、その人に対して好意や興味を持つ、と。
これは対人関係においてだけじゃなく、物や事象に於いても同様です。
オペラや骨董、お酒、ダーツなどなど、趣味の多くは知れば知るほど面白くなりますものね。


ここでひとつ疑問が浮かぶ方もいるでしょう。
「わざわざ自分の貴重なリソース使って、今オペラに触れる意味、あるの?」

あります。
大いにあります。

オペラには歴史があります。若い僕らが歴史のあるものに触れることはとても有意義です。
その理由は以下。

ひとつ
話のネタになる。
年配の方や海外の方と時代・文化を超えた共通の話題を持つことが出来ます。

ひとつ
積み重ねられてきた歴史の一部として自分が存在できる。
これはロマンです。400年というスパンで脈々と受け継がれてきた文化の
まさに今、歴史の最先端に身を置くことができます。
次の歴史のブロックをあなたが積み上げることになるのです。

ひとつ
自分が困ったり迷ったり悩んだりしたときも、オペラはそこにある。
もしオペラをよく知っていって、愛着を持ちはじめたとしたら、
あるひとつのアリア(曲のこと)が自分の帰る場所のような存在になることもあります。
なんたって400年生きてきた大木ですから、その木陰は大きく心地よいです。


大学院の研究や初めたばかりの仕事をゴリゴリやっていくうちに、
どこかでふと、「ゆとり」のような場所が必要になる瞬間が必ずきます。
どんなことでも構いません。フットサルでもダーツでもヨガでもいいですが、
自分の避難場所のひとつに、安らかにインプットを蓄積できる空間のひとつに
オペラという候補をあげておいても損じゃないです。

あ、あと歴史ある文化いう意味ではオペラだけじゃなく日本の芸能もおすすめします。
歌舞伎、能、落語、あと最近話題の文楽。
これらも知れば知るほど面白くなるタイプの娯楽です。
一生かけて向き合っても飽きることがない類いの遊びです。

大きな懐を持った文化については、早くに出会って友達になった方がいいです。
もちろんいつからスタートしても構わないのですけど、
長く人生を一緒に歩んだほうが、きっとお互いのいいところをじっくり知れるような気がするのです。


クラブで朝まで踊るとか、ロックフェスでモッシュするみたいな爽快感は
オペラでは確かに感じづらいのかもしれませんが、
アンティーク家具のそろったオシャレなカフェでスイーツを食べるとか、
仕事の気分転換に軽くランニングをするとか、
そういう自分との親密感をはかるかんじは、
オペラやクラシックでもたっぷり体感できます。


僕は特にこんな人たちにオペラを勧めます。

・海外旅行が好きな人
・バーやレストラン、オシャレな雰囲気が好きな人
・ひとりきりでぼーっと考え事をするのが好きな人
・何度も読み返すほど好きな本がある人

最後のひとつは本だけじゃなくて、映画でも歌でもいいです。
何度も何度も見返す映画や、聞き返す歌がある人。
あるいは場所でも。何度も通ってしまうほど好きな雑貨屋さんやカフェがある人。

あ、あたしなんか当てはまるかも、と思った人は
ぜひ試しにと思って一度オペラを観にいってください。
あるいは youtube でもいいです。10分なにもしなくていい時間をつくって
オペラのアリアを聴いてみてください。
それで気に入らなかったら、「なーんだ、あたしこれきらい」って言ってもらって構いません。
「わからない」から「きらい」になっただけでも、大した変化です。
それでさらに「なんかちょっと気に入った、くせになる感じ」と思ってもらえたなら
僕らオペラに携わる人間はとても喜びます。
嬉しすぎて自宅に招待して、美味しいワインと美味しいチーズや生ハムを
ごちそうしたいぐらいな気分です。


最初の問いに戻ります。
「娯楽が多様化した現代において、わざわざ見に行くほどオペラの価値はあるのか」

この答え、正直僕にはわかりません。
だって他のエンターテイメントや遊びもそれぞれに魅力を持っているから。
どれが優れているか、みたいな話ではないので。

だけどひとつだけ確かなことは
もし心の隅の方にほんの少しでも“オペラ”に対する興味を持っていて、
それが「実態がわからないから」という不安で押込められているのだとしたら、
それはとても勿体ないことである。
ちょっとだけ勇気を出して、好奇心を優先させてみてほしい、と。
そうしたら必ず素敵な体験ができるはず、これは約束できます。
オペラにはそれくらいの価値が、十分あります。


でもそうはいっても、どこでやってるの、どれをみたらいいのという方。
試しにこの演奏会を見にきてください。

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山梨県全国国民文化祭プレ企画
アフタヌーンコンサート
「 ち ょ っ と 特 別 な 時 間 」

日時 2012年10月27日 土曜日 12:30開場 13:00開演
場所 甲府市総合市民会館 芸術ホール
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さんざんオペラの話をしたのに、演奏会の曲目には
一曲もオペラの曲は入っていませんが笑
まずは「オペラ歌手」という人種がどんな声を出すのか、
どんな風貌をしてどんな生態なのかを知っていただけると、
ほんのちょっとだけ、オペラという存在に親しみがわくはずです。

その日にち、時間、場所、どれかが都合悪いぞー!!という方。
大丈夫です。Ustream中継をする予定なので、ご自分の部屋で
リアルタイムでも、録画でも、ご覧頂けます。

それで、僕や佐々木や廣橋、桑原に興味を持っていただけたら、
どうぞ気軽にTwitterをフォローしてください。
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現代のクラシック界の面白いところです。アーティストとSNSで繋がれる。
次の演奏会やおすすめの演奏会情報を、その分野の人から
リアルタイムで仕入れることができます。


あと、このエントリーにすこしでも共感してくださった方、
あるいは「変だろ」と思われた方でも、
シェアをしていただけると幸いです。
ほんの軽い気持ちで構わないので、よろしくお願いします。




yy

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