今年2015年の5月22日に
「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次基本方針)」というものが
閣議されたようです。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/hoshin/
平成13年に制定された文化芸術振興基本法に基づいて、
日本は「文化芸術立国」を目指すらしいんですけど
そのために何をしたらいいのかとか、そういうことがこの方針に書かれています。
面白そうなので読んでみました。
どんなことが書いてあったのかを僕の視点からですがまとめてみます。
けっこう面白かったですよ。
☆文化芸術の振興に関する基本的な方針ってなに?
先述もしましたが、日本は「文化芸術立国」を目指していくようです。
輸出業で儲けるとか、技術力で国際的地位をあげるとか、市場の多様性で独自性を打ち出すとか
国のグローバルな競争力を上げていく方法はいくつもありますが、
これからの日本は文化や芸術の分野でいいもの(人、コンテンツ、技術)を創って
国際的な競争力や、国内の経済状況を改善していこうという視点があるようです。
この方針は平成14年に第1次基本方針が出されたあと、
平成19年に第2次、平成23年に第3次が出されたことに続く、
第4次基本方針です。
なぜこう頻繁に基本方針に修正が加えられるかというと
やはり文化芸術を取り巻く諸情勢の変化があるのでそれを考慮するためとのこと。
ちなみにこの第4次基本方針は今後だいたい6年間を見通して策定されています。
ズバリ言うと「2020年東京オリンピック・パラリンピック」に向けて
ということですね。
それに加えて、地方創生、東日本大震災からの復興なども含まれています。
今回の改訂のポイントとしては
- 我が国が目指す「文化芸術立国」の姿を明示
ということが明記されています。
ガチで文化芸術立国するから、具体的にどういうことをやっていくか決めるよ!
ってことですね。
それに伴って、社会をあげて文化芸術振興をしよう!ということになっています。
具体的には大きく4つの幹がありまして
- 地方創生
- 2020年東京オリンピック・パラリンピック
- 東日本大震災からの復興
- 文化芸術への公的支援を「戦略的投資」と位置づけ文化芸術振興への支援を重点化
となっています。
これ、4つめがけっこう大事というか、クリエーター側にいる僕らとしては重要で
国を挙げて文化芸術を国際交流や国際競争の資源としてとらえて、
それらへの公的支援を「戦略的投資」と位置づけしますよ、
支援も重点化しますよ、と言ってくれているのです。なんて素晴らしい。
これらを実現させるために5つの重点戦略が定められています。
各項目に4〜9行の補足説明がありますが、それらがきになる方は
元資料をぜひ読んでいただいて、僕なりに要点を摘み上げると
5つの重点戦略は以下のようになります。
1、支援します
2、教育します
3、保存・継承します
4、国内外へ発信・交流します
5、体制整備します
僕的に特に「いいね!」と思ったのは、「1、支援」と「2、教育」について。
この辺のこともからめながら以下に全文の中から気になるところをまとめみたいと思います。
(なんてったって資料は全部で32ページある・・・・)
☆第4次基本方針が目指すこと
●あらゆる人々が全国様々な場所で創作活動への参加、鑑賞体験ができる
この「あらゆる人々」と「全国様々な場所」というのがポイントだと思われます。
「あらゆる人々」は全文中で以下のように言い換えられています。
- 健常者
- 障害者
- 子育て中の保護者
- 青少年
- 外国人
- 老人
想定されるのは、本当にあらゆる人々です。
年齢、性別、職業、身体的特徴、国籍、ルーツ、その他諸々関係なく
あらゆる人々を想定して、この基本方針は書かれています。
老若男女、生活基盤の差異、話す言語の違い等々関係なく
創作活動への参加や鑑賞体験ができるようにという指針が提示されています。
また、創作活動を展開する人については「多様な主体」という書かれ方がしていて
そこには
- 個人
- NPO・NGOを含む民間団体
- 企業
- 地方公共団体
- 国
など、本当に多様な主体が想定されています。
この「あらゆる人々」の想定に関連して、具体的な施策のキーワードとして
☆バリアフリー
☆字幕や音声案内サービスの充実
☆託児サービスの充実
☆案内の多言語化
☆(劇場、美術館、博物館などの)利用料や入館料の軽減
などが挙げられています。
また、創作活動が多様な主体によって展開されることを活性化するために
企業などが文化芸術活動を支援しやすくなるような税制上の措置の周知などを
推進していくようです。日本でも寄付文化が活発になればいいですね!
また、「全国様々な場所」は以下のように言い換えられています。
- 国民がその居住する地域にかかわらず(等しく文化芸術を鑑賞・参加・創造できる)
- 各地域の文化施設や公民館のみならず、学校教育に支障のない範囲での教室や廃校施設の利用、それ以外の様々な施設(の利用の促進。)
どんな都心に住んでいても、どんな地方に住んでいても
国民が文化芸術に触れられる、参加できる環境を整備していきます。
そのために、各地のさまざまな施設や空間を文化芸術活動に利用できるように
しくみなども整備していきます、ということですね。
で、この施設や空間を利用する主体は「多様な主体」です。
なので、個人でもいいし、民間団体でもいいのです。
●国内外への発信の強化
国内で行われる文化芸術活動やさまざまな人材・コンテンツを
国内外へ発信していくことも明言されています。
その理由として
文化芸術は、成熟社会における成長の源泉、国家への威信付与、地域への愛着の深化、周辺ビジネスへの波及効果、将来世代のために継承すべき価値といった社会的便益(外部性)を有する公共財である。
(中略)このような認識の下、従来、社会的費用として捉える向きもあった文化芸術への公的支援に関する考え方を転換し、社会的必要性に基づく戦略的な投資と捉え直す。(P9, L7)
ということが書かれています。
文化芸術活動や作品、文化財、人材、さまざまなコンテンツを
「我が国の国力を高めるもの」として位置づけているようです。
あまり「国のために」と芸術を利用されないように監視する必要はありますが
(軍歌とか、国粋主義的洗脳とか・・・・?)
より自由な表現活動が正当な支援を受けた上で、
グローバルに戦えるコンテンツ、リソースとして捉えられるなら
これは素晴らしいことではないでしょうか。
あらゆる人々があらゆる場所で文化芸術活動に関与できる状況の中で
優れた文化芸術が創造される。
そしてそれらを「素晴らしいコンテンツがあるよーー!!!」と
国内外にその存在と価値を発信していく。
いいことですよね。
あくまでも「お国のために」的にいやーなかんじで利用されないように
僕たちが監視するという姿勢は大切にしなければいけないとは思いますが。
●文化芸術活動に対する効果的な支援と人的リソースの育成
ちょっと感動したんですけど、こんなことも明言されています。
芸術家等がその能力を向上させ、十分に発揮し、自らの職業や活動に安心して安全に取り組めるよう、芸術家等の活動環境等に関する諸条件の整備や、社会的な役割に関する理解の促進、社会的、経済的及び文化的地位の向上に努める。(P24, L9)
そのために
- 顕彰制度を拡充する
- 雇用増大を図ることも念頭に置き、(中略)専門人材の育成・活用を充実する
- (子供向けの)体験型ワークショップをはじめ、学校における芸術教育を充実する
といったことも挙げられています。
海外研修や新国立劇場における研修事業の充実、活動成果を発表する機会や
世界的な芸術家による指導の機会の充実なども明文化されていて、
伝統芸能の伝承者や文化財の保存技術者・技能者、
文化施設や文化芸術団体のアートマネジメント担当者、舞台技術者・技能者、
美術館、博物館における学芸員・各種専門職員、地方公共団体の文化政策担当者等、
幅広い人材の育成及び確保、資質向上のための研修を充実させたり、
芸術系大学が有する教員や教育研究機能、施設・資料等、様々な資源を活用し、
アートマネジメント人材の育成を図る、といったことも盛り込まれています。
最近ですと、僕の身の回りでは、東京芸術大学の大学院の修士課程の組織が変更され
「大学院国際芸術創造研究家 アートプロデュース専攻」が新設されたり、
今まで大学院音楽研究科声楽専攻としてひとまとめになっていたものが
「声楽専攻」と「オペラ専攻」に細分化されたりといった変化がありました。
これもこの第4次指針の閣議決定を見越しての処置だったのでしょうか。
とにかく、文化芸術活動に対する支援は、単なる社会的支援にとどまらず
より戦略的な投資として改めて捉えなおされ、
また人材も立派なリソースとして設定されその育成に力が注がれるようなので
これは願ったり叶ったりの指針です。
目標として
「文化芸術に従事する者が安心して、希望を持ちながら働いている。そして、文化芸術関係の新たな雇用や、産業が現在よりも大幅に創出されている。(P4, L11)」
といったことも明言されています。わお。
ちょっと疲れたのでこの辺にします。
他にもいろんなことが書かれていますが、気になる方はどうぞ原文を読んでください。
今後、文化芸術活動についてのさまざまな支援制度が充実していくのかもしれません。
文化芸術活動に従事する人材の地位向上なども図られていくのかもしれません。
より活発に海外との交流が促進され、人材や作品・プロダクションについての発信が
取り図られていくのかもしれません。
そう考えると、ワクワクしますね。
文化庁のこの指針を僕らがどう捉えるか、です。
否定的に捉えるもよし。肯定的に捉えるもよし。ちょっと様子みるもよし。
僕としては、あくまでも心的に自由な表現活動にますます頑張っていきながらも
こういった行政の動向も注視して、利用できる制度などはしっかりと利用し、
自分一人ではできないことにもレバレッジを効かせていけるような体制をつくろうと思っています。
なにはともあれ、文化芸術にスポットが当たることはいいことです。
クリエイターの皆さん、表現者の皆さん、
ぜひお住いの土地や出身地の劇場、美術館、博物館、文化に携わる行政担当者と
積極的にコンタクトを取ってみてください。
彼らも、業績として報告できるようなコンテンツをいつも探していますから、
もしかしたら一緒になって何か面白いことができるかもしれませんよ!!!!
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