舞台出演のお知らせです。
来月10月12〜15日、
上野ストアハウスにて上演される
「天守物語」に出演いたします。
以下長文です。
僕の、この作品へかける想いが、詰め込まれています。
☆ ☆ ☆
この作品は、「婦系図」や「日本橋」「夜叉ケ池」などで知られる
泉鏡花(いずみきょうか)によって書かれています。
作品の多くは映画化されており、出演者も
市川雷蔵、鶴田浩二、長谷川一夫、山本富士子、
淡島千景、勝新太郎、坂東玉三郎と
昭和の名優たちの名が連なります。
その中でも本作「天守物語」は名作の呼び声も高く、
坂東玉三郎主演による映画化、舞台化のみならず、
オペラ化なんかもされています。
そういえば2014年に制作された「新版 天守物語」というプロダクションでは
登場人物の一人、薄(すすき)という侍女を、
先日お亡くなりになられた翻訳家で演出家の、青井陽治先生が演じられたのでした。
青井先生をして
泉鏡花は自分にとって最大のあこがれの世界であり、また同時に最大の禁断の世界。ここにいつか踏み込むことがあるとしたら、よほどの覚悟がなければいけないと考えていました。今まで積み重ねてきた力を全部出しきって、この世界に食い下がっていきたいと思っております。
とおっしゃられた世界に、このたび山野は挑むことになります。
物語の舞台は、姫路城の天守閣。
五重の階層の最上階です。
そこは何か不思議な力が渦巻く世界で、
ずいぶんと人間はひとりも足を踏み入れたことがないのでした。
そんな空間に棲んでいるのは、妖怪たちです。
主は富姫(とみひめ)という名の、それはそれは美しく気高い夫人。
この富姫は、長壁姫(おさかべひめ)という名でも伝承されています。
物語の前半ではこの富姫の棲む姫路城天守閣に、
遠く猪苗代湖から亀姫(かめひめ)という義姉妹が訪ねてき、
手鞠をつき、宴会を開き、互いの土産を競い合い、
怪しい変化術で、姫路の殿様が可愛がる真っ白な鷹をとってしまったり。
そんな、妖怪らしい摩訶不思議で生々しく美しい場面が紡がれます。
後半になると、「殿様秘蔵の鷹を逸した」という謂れのない罪で
鷹を取り返さなければ即刻切腹という命令を下された
姫川図書之助(ひめかわずしょのすけ)という武士が、
ふだんは一切、人の立ち入らない富姫の天守閣に登ってきます。
そしてふたりは、恋に落ちます。
けれど棲む世界が違うふたり。
一度は別れを選ぶ図書ですが、いくつも起きる事件の末に、
富姫への愛をおさえることができなくなります。
果たして、図書は切腹を免れることができるのでしょうか。
果たして、富姫と図書の、妖怪と人間との愛は、
どのような結末を迎えるのでしょうか。
☆ ☆ ☆
本作は、上でも書きました通り、
歌舞伎や新派、オペラといった切り口で、
たびたび上演されてきた名作中の名作です。
また、現代劇の手法で上演されるにしても、
歌舞伎や狂言、能、女形などのフィールドで活躍されている
芸に秀でた役者さんたちにより上演されてきた作品でもあります。
それに、今回、
おそらく平均年齢が27〜29才という若いカンパニーにて
挑戦してみようというのです。
これは、冷静に判断して、たいへん無謀な挑戦です。
実際、現在作品に取り組んでいる僕たちにしてみても、
戯曲が求めている世界観が明確でかつ妖しげで、
それを表現するための技術や身体の使い方などに
とても高度な要素を必要とされていて、
毎日稽古で、その高い壁を乗り越えるべく、悪戦苦闘しているのです。
でも、だからこそ言えます。
僕たちのカンパニーには、歌舞伎俳優も、狂言役者も、能楽師もいません。
だからこそ、
これまで上演された「天守物語」とは
まったく違った風景を創り出すことができます。
今回の舞台は、ベースに、役者によるリアリズム演劇の手法を据えています。
ただ、妖怪の僕らの常識からは逸脱した世界や性質を表すためには、
芝居上のかなりの部分、型(かた)のような身体表現を伴う必要があります。
また、妖怪の棲む世界や、そこに漂う妖気、
興奮するたびに変化していく妖怪の姿を表すために
コンテンポラリーダンスのフィールドから、
美しく実力もある4人のダンサーが参加してくれています。
彼女たちは舞台上でダンスを踊るだけでなく、なんとセリフも割り当てられています。
富姫の侍女、萩・桔梗・女郎花・葛の4人を演じるからです。
劇中の世界観を彩るために必要不可欠な劇音楽は、全曲書き下ろしです。
それも、和楽器による演奏にて、この作品のために録音されます。
「古典芸能普キュー委員会」という、若手邦楽奏者によって結成されたユニットが、
音楽を全面監修してくれています。
つまり
演劇 × コンテンポラリーダンス × 和楽器
のコラボーレーションにて、
天守物語の世界観を表現していこうとしているわけです。
この融合を可能にするのは、演出家である中原和樹の存在です。
早稲田大学出身の中原は、学生時代に英語劇のサークルに出会い、
当初は役者として舞台に関わりはじめます。
その後、演出家に転向し、また舞台監督としての経験も積み、
演劇的な"ソフト面"での作品づくりからも、
舞台装置・照明といった"ハード面"での作品づくりからも、
舞台演劇を隅から隅まで熟知している奇才です。
僕は彼のことを本当に信頼していて、
彼の演出作品に出たり、毎月4〜5回開催される彼のワークショップに参加したり、
あるいは一緒にミュージカルのワークショップを東京・山梨などで開催したり、
来年7月には新作の舞台作品を製作することも決定しています。
中原和樹の見ている演劇の世界観に、僕は多大なる影響を受けているし、
彼に出会ったことで、歌をうたうことへの考え方も大きく変わりました。
先月まで出演していた「ビューティフル」での演技なども、
中原和樹のワークショップで知り、身につけた技術がすべてのベースになっています。
僕には、「ビューティフル」で山野靖博という俳優の
存在を知ってくださった方のなかから、
ひとりでも多くの方に、山野という存在を通して、
中原和樹の作る演劇の世界を知ってほしいという
強い強い想いがあるのです。
それくらい、全幅の信頼を置いています。
☆ ☆ ☆
会場の上野ストアハウスは、全100席ほどのコンパクトな劇場です。
その、狭い狭い舞台に、姫路城天守閣の世界が、どのように立ち上がるのか。
妖怪という存在は、もしかしたらすでに、
過去のものになってしまったかもしれません。
現代社会、特に東京という街ではありとあらゆるところで電気が使われ、
夜になって一寸先も見えないほどの暗闇に僕たちが出会うことは、
ほとんどなくなりましたから。
けれど、妖怪は暗闇にひそんでいるのです。
夜道を歩いていると、なにか背後をつけてくるような気がする。
けれど勇気を振り絞って振り返ってみても、その暗闇には誰もいない。
目には何も見えないんだけど、でも、なにかいるような気がする。
その「気がする」ところに、妖怪はいるのです。
僕たち人間が生きていて、闇に恐怖を感じたり、
不吉な出来事や物音に恐れを感じていると、
僕たちの想像力のなかで妖怪たちは、途端に力を発揮していくのです。
妖怪たちが活き活きと生きるためには、暗闇と、人間の想像力が必要なのです。
人間の想像力が失われてしまえば、同時に妖怪たちも、息絶える運命なのです。
天守物語の話は、妖怪の話ですけれど、
同時に、僕たち人間の本性や、想像力の話でもあるのです。
自由奔放に生きる妖怪たちの姿がいまもそこにあるのは、
本心では自由奔放に生きたいと願っていた、人間の欲望が、
日本人の歴史のなかで連綿と紡がれてきたからこそなのです。
これからも、Twitterで、妖怪についての話、この作品についての話など
さまざまつぶやいていこうと思います。ご興味ある方はぜひチェックしてくださいね。
それでは、会場にてお待ちしております。
僕も自由奔放に生きる、山伏の妖怪を嬉々として演じようと思っています。
たくさんのお客様と、お会いできますように!!!!!!
もんもちながら6.0「天守物語」
演目:「天守物語」 作:泉鏡花
演出:中原和樹
振付:熊谷乃理子(Dance Company Nomade~s)
作編曲:杵屋直光(古典芸能普キュー委員会)・安本健人
企画・製作:もんもちプロジェクト
■演ジ手
越前屋由隆(もんもちプロジェクト)
笠川奈美(もんもちプロジェクト)
森川結美子
南谷朝子
高橋志帆
山野靖博
岩崎さとし
千葉総一郎
細谷彩佳
北村真帆
落司さとこ
中村江利奈
小林香奈子(もんもちプロジェクト)
岸本有紀子
伊集院茉衣
アンダースタディ 宇都恵利花(team.ごせんぷ)
■日程
2017年10月12日(木)~15日(日)
12(木)19時~
13(金)15時~/19時~
14(土)14時~/18時~
15(日)12時半~/17時~
*開場は開演の30分前です
■チケット料金
4000円(前売当日共)
■ご予約
・予約フォームから
・メールで
yoyaku.yy@gmail.com
※件名に「天守物語予約」本文に「お名前、ご連絡先、ご希望の日時、枚数」をご記入下さい。
■会場
上野ストアハウス
東京都台東区北上野1-6-11 NORDビル B1
上野駅徒歩11分
■お問い合わせ
公式ホームぺージ http://monmochiproject.net
LINE@どしどし更新中!
BASEにて公式ショップ開設中!
https://yasuhiro.official.ec
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