2016年8月6日土曜日

「ジャージーボーイズ」終演のご報告とあれこれ



しばらく時間が経ってしまいましたが、
6月29、30日とプレビュー公演で幕を開け
7月1日より本公演が開始しました日本版ジャージーボーイズ初演公演
先日7月31日に無事、千秋楽を迎えることができました。
応援くださったみなさま、支えてくださったみなさま、
心より御礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました。


1ヶ月に渡る公演が終わったときに感じた、その生の感情は
感謝の気持ちと合わせてTwitterにてご報告させていただきました。
今日はあらためてブログの上にて、この、僕にとっての大冒険の日々を
振り返ってみたいなと思います。

重なる内容もあるかと思いますが、お読みいただければ嬉しく思います。



結論から書けば、とっても簡単で
「僕の人生のこのタイミングに、このカンパニーで、この作品に出会えたことが幸せ」
ということです。ほんとに。






ジャージーボーイズのまとめはこの記事だけでお終いにしようと思うので、
このブログは、超長くなります。



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎


まずは、自分のこと。



高校生のときに"声楽家になりたい"と思いクラシックの道に入り、
浪人を覚悟で受験して、東京芸術大学の声楽科に入学しました。
鼻高々で迎えた学生生活は挫折の連続で、自分は天才ではないということを思い知らされました。

大学を卒業するころ、才能のある先輩や仲間が大学院に進み、
あるいは海外で華々しい活躍をするのを横目に、
自分がまだ、クラシック界の土俵で歌一本で戦える実力がないという事実は、
僕自身がいちばん理解していました。

だから、できることはいろいろやりました。
演奏会の企画運営、モデル、ブログを毎日書く、アルバイト、歌を教えることetc
うまくいかないことはたくさんあって、うまくいくことはほんの少しでした。
それでもそんな毎日のなかで、歌の練習だけは続けていました。
いつか、自分の歌を武器に、ちゃんと戦えるようになる日を目指して、です。

そうやって2年ほどを過ごしたある日、所属しているモデル事務所から
「ミュージカルのオーディション、受けてみない?」
と誘いがありました。きっと、クラシックの舞台にも繋がるいい経験ができるから、と。

小学校に上がる前から、
ジーン・ケリーやジュリー・アンドリュースの映画を観るのが好きだったので、
ミュージカルには憧れがありました。

「僕は踊れないけど、確かに大きな経験になる。
 それに、コーラスグループの話だからベースヴォーカルは必要だろうし、
 ダメでもともと、チャレンジしてみよう。」

そう思って、えいや!と受けてみたのが、ジャージーボーイズのオーディションでした。

オーディションは全くわけのわからない世界で、
ダンス審査は案の定、何が起こっているのかも理解できなくて、お芝居も無我夢中で

歌唱審査もとても緊張したのを覚えていますが「僕の声を聞いてもらおう。ダメで元々」なんだから、と
自分が信じる歌を、一生懸命歌いました。

それから一ヶ月以上経って、なにも連絡がないのですっかり落ちたと思っていた頃、
最寄りの駅から自宅への帰り道に事務所から電話があり「通ったよ」と知らされました。
その瞬間の胸のドキドキ、世界がぐにゃりとねじれたような感覚。
自分の歌が、パフォーマンスが初めて認められたという喜びで身体が満たされました。
マネージャーさんの驚いたような声も忘れられません。

それが、去年の夏でした。



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎



それから1年ほど経つあいだに、ダンスのレッスンを受け、芝居の基礎稽古にも通い、
11月にはフライヤ用のスチール撮影があり(とても寒い日の野外撮影だった!!!)、
そして12月25日の情報解禁。たくさんの人が驚いてくれました笑
もちろん、祝福と応援もたくさんいただきました。


そうして今か今かと待ちわびた稽古スタートの日程を知らされ、
触れれば指を切りそうなほどパリッとした真新しい台本と楽譜を渡され、
不安まじりに台本を読み、できる限りの譜読みをして迎えた稽古初日。
僕の夏の大冒険がはじまりました。



他のキャストさんも盛んに書いてらっしゃいますが、
あのね、音楽稽古、本当に大変でした。
どの曲もどの曲も緻密なハーモニーが要求されます。
さらに、元々英語の歌詞を日本語に変えたぶん失われるリズム感やグルーヴ感を補うために
日本語の子音や母音のニュアンスにも細かく指示が入ります。
音符のリズムやアーティキュレーション(音のかたちや表情)も、
ほんとにひとつひとつの音符ごと明確な指示が追加されていきます。

クラシックの唱法はある程度理解していますが、
グルーヴのあるポップスの唱法をしっかりと勉強したことはなかったので、
これはもう試行錯誤の連続でした。
そして、そんな試行錯誤を的確に導いてくださったのは
音楽監督補でありヴォーカルデザイナーの福井小百合さんでした。
(しかしまあ、あの総譜からあそこまで細かい音楽的ディレクションを導き出した
 小百合さんの能力は、途轍もないな・・・音程への感覚も超敏感・・・)


と、いきなり超ハードルの高い音楽稽古からスタートしたジャージーボーイズですが、
僕としては音楽稽古がいちばん最初で、ほんとによかったと思います。あとから考えると。
だって勝手がわからないと言ったって、歌はずっと歌ってきた自信がありましたから。
要求にすぐに対応できない自分が悔しい反面、「食らいついてやるぜ!」という反骨精神も生まれました。


サバイバルのような音楽稽古がひとまず終わり、本読みから芝居の稽古に入ると
そこからはもう完全に未知の領域です。
台詞の言い方ひとつわからないし、その場面で何をするのが正解なのか皆目見当がつかない。
でもそうやって戸惑っていると、演出助手の落石さんや、歌唱指導の小百合さん、
そしてベテランとして作品の要所をしっかりと締めてくださった戸井さんや阿部さん、
さらにはプリシンシパルのみなさんまでもが、
「ヤス、台詞が節になっちゃってるよ」「ちゃんとその台詞が言いたい状態にならなきゃ」
「他の人の芝居見てごらん、たくさんヒントあるよ」「もっと堂々としてなよ」と
声をかけてくださるのです。ああ、思い出したら涙が出てきた。


踊りだってぜんぜん自信も実力もないなかで、新生フォーシーズンズのひとりという役割りをいただき
どうしたらお客様に見ていただく作品として恥ずかしくない状態にたどり着けるのかと途方に暮れていると、
新太や白石さんや大音くんが「ヤスさん、ここはもっとこうやるとカッコイイですよ」とか
「ジャケット着て踊る時にはここに気をつけるといいですよ」とか
惜しげも無くアドヴァイスをくれました。


あと、元来引っ込み思案な僕なので、
カンパニーの皆さんと打ち解けるのにも少し時間がかかったのですが
そんなときにもジャージーガールズの皆さんがイジってくださったりと
本当に、すべての瞬間、皆さんに助けられて、存在することができました。


なんか書いてて恥ずかしくなってきたけれど、でもこれは本当で、
それぐらい僕はなんにもできなかったのです。
その、何にもできない僕にも根気強くカンパニーの一員としての視線を向けてくださった皆さんの存在。
ありがたい、という言葉しか浮かんできません。


そして、そんなカンパニーの色を作ってくださったのはおそらく、
というか間違いなく、演出の藤田俊太郎さんの佇まいがあってこそだったと思います。
稽古開始して、足を引っ張らないように頑張りますが
ご迷惑をおかけしたらすいませんと僕が挨拶しに行ったとき、
藤田さんはいつものあの様子で笑いながら
「大丈夫です大丈夫です、僕いままで2000人ぐらいの若い役者と会ってるんで
 あの、読み合わせとか必要だったらいつでも言ってください、僕ずっと稽古場にいるんで」
と答えてくださいました。



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎



手探りの稽古が終わり、小屋入りして、怒涛の舞台稽古。
あれよあれよという間にGP、そしてプレビュー。

プレビューがあけてからのお客様の反応。
客席からのリアクションで新たに気づかされることの多いこと多いこと。
そして初日があいて、様々な誕生日サプライズを経て、中日過ぎて、千秋楽まで。
毎日毎日同じ場所に通い、毎日毎日楽屋で同じメンバーと顔を合わせ、
毎日毎日同じ時間に同じ顔ぶれとロビーでアップをして、
毎日毎日素晴らしいカンパニーの皆さんと昨日とは全く空気の違う、同じ作品を生きる。
幸せ以外のなにものでもなかったなー。


本公演がはじまって41回。
41回も舞台に立てる。同じ作品で。同じ役で。
それも、同じことをなぞるんじゃなくて、その瞬間瞬間を必死に生きる表現者のみなさんと。
たくさんのものを吸収したと思うし、知らない世界もたくさん経験しました。
手応えを感じることもあったし、全然ダメだなって落ち込むこともあったし、
自分では気づいていないことを指摘していただいたこともたくさんあった。
お客様から嬉しい嬉しい反応もたくさんいただいたし、悔しい思いも当然しました。


そんな日々を、ジャージーボーイズという作品を軸にして過ごせたこと。
本当に僕の人生にとっての記念碑的な時間でした。


千秋楽を終えてから1週間弱が過ぎましたが、
街を歩いて目に飛び込んでくる光景、耳に入ってくる音や音楽が
ジャージーボーイズの世界のありとあらゆる出来事を思い起こさせます。
ジャージーロスって言葉が巷では流行っているようですが(笑)、
僕にとっては全然「ロス」じゃないんですよね。寂しさとかじゃない。
でも、あの経験がちゃんと僕の細胞に"しるし"のように組み込まれていて、
そのしるしと共に、新しい日々を歩んでいる、そんな感じなのです。

シャンソンを歌っても、オペラを歌っても、大久保利通の芝居をしていても、
シアタークリエという会場でカンパニーの皆さんと、観客の皆さんと一緒に過ごした時間が
僕の背中を押してくれている感じがするのです。
きっとこれからも、この感覚といっしょに僕は生きていくのだと思います。



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎



はい、ここまででざっと4000字です。ウケる笑
でも思ったよりも長くならなかったなー。

いくつかお気に入りの写真とあわせて思い出話をしてみようと思います。






楽屋がいっしょだった新生フォーシーズンズの面々。
長い時間ともに過ごしてたけれど、本当に楽しかった。
わからない、僕が突然歌い出すオペラにみんなは辟易していたかもしれないけれど笑
馬鹿話も真剣な話もたくさんして、僕のなかでは戦友ってかんじ。
開演10分前ぐらいに、まだ楽屋に残ってるメンバーに向かって
「よろしくお願いします」と言って部屋を出ると、すごくシャキッとした気分になりました。





その楽屋にはいつももっくんさんが遊びに来てくれて、
これまたくだらない話を主に、楽しい時間を過ごさせていただきました。
僕がちょっとお芝居のことで余裕がなくなっていたときにも、
それを察知してかどうかはわからないけど、絶妙なタイミングで
何気なく声をかけてくださるもっくんさんって、すげえ人だなって思います。




この写真!!!!!!!チームボンボン!!!!!!!
みーんなに自慢したいやつ!!!!いいだろーーーー!!!!!
ご紹介するまでもないですが、僕の左側が白組ニック・マッシの福井晶一さん。
そして右側が赤組ニック・マッシの吉原光夫さん。
実は劇中、フォーシーズンズのメンバーの歌パートには
アンサンブルのメンバーがそれぞれ声を重ねていたのですが、
僕は光栄にもこのお二人、グループの低音を担うニックのパートを
いっしょに歌わさせていただいていたのです。

音楽稽古の最中から、「ヤスはニックと同じパートだから間に座って」と
燦然と輝くミュージカルスターのこのお二人に挟まれていました。
気さくに話しかけてくださる晶一さんと、一見恐そうなのに実はとても芯の温かな光夫さん。
このお二人といっしょに、ボンボン言えたこと、本当に幸せでした。
その幸せがどれほどのものなのか、もう、僕のこの破顔っぷりを見れば一目瞭然ですね。





そして。
ブロードウェイのジャージーボーイスのツアーに長く同行して、
そして僕ら日本版ジャージーボーイズの初演のバンドメンバーとしても参加してくれた
サックスのクリストファー・ミエリさん。
この写真のこの目が本当に語っている通りの、穏やかで優しくて温かな音楽家でした。
大千秋楽を終えて、キャスト全員が高揚した気分で楽屋前に集合したときに告げられた
クリスの突然の訃報。
あのときの胸の虚空、体の中心が溶けるように流れ出た悲しみ。ぜったいに忘れません。
でも、それよりも、クリスの人柄そのままがやわらかな風に変身したような音色。
ちょっとはにかんだような笑顔と「おつかれさまです」の声。
いっしょに舞台を作り、いっしょに音楽ができた喜びを、ぜったいに忘れません。







"A da passà a nuttata"
「これもいつかは終わる」

そう、楽しいことも悲しいことも、いつかは終わる。
でもそこで感じたことや、動いた心が描いた軌跡は、消えることがない。
それに、何かが終わるからこそ、新しい何かを始めることができる。
公演ごとに、新しく文字を書いて、舞台の袖で開演のタイミングを待ち、
無音の舞台上へ出ていく仲間たちに続いてカメラの前にこのカチンコを掲げる。
音楽が始まって、太田監督と目配せをして、物語が動きだす。
そして、4人分の人生が紡がれたあと、あの空間が喜びのエネルギーでいっぱいになって、
カンパニーの一員として誇らしい気持ちで礼をしたとき。
舞台袖にはけるために少し振り向くとそこには、自分で書いた字がモニターに映し出されてる。
なんともいえない愛おしさが胸の中に湧いてきて、舞台から下がるあの瞬間のこと。
ぜったいに忘れません。



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎



宣言通り、長々と書いてしまった。
でも本当にこれでおしまい。
僕の人生のこのタイミングに、このカンパニーで、この作品に出会えたことが
本当に幸せでした。



この経験を大きな糧として
これからの表現者としての人生を歩いていきます。
でこぼこ道だろうが急な坂だろうが、
このカンパニーの一員であったことを誇りに、
止まらず腐らず謙虚に誠実に、表現者としての人生を歩いていきます。
これは、宣言なのであります。
そして、自分自身への誓いなのであります。


ジャージーボーイズを愛してくださって、本当に有難うございました。
これからもぜひ愛しつづけてください。
そして、半人前の僕を応援してくださって、本当に有難うございました。
これからの成長を以って、恩返しをさせていただきたいと思います。





ありがとうございました!!!!!!
















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